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また、しばらくの沈黙。
耀はすべての力が抜け切ったみたいに目尻を下げ、口を開けていて。
不覚にも可愛いと思ってしまった。
そんな余裕が自分にあったのかな、と、心の隅で首を捻ったりして。
「俺も。藍が好きだよ」
耀の声が事務所に響く。
結論なんて出せなくても、素直に嬉しかった。
「ごめんね。……奥さんが来たら悪いでしょ?」
初めて口にしてみた言葉は、どんなに平静を装ってもやっぱり重く、苦しい。
じわりと涙が滲みかけた。
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