暗雲

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『愛してる』 囁かれた言葉が何度も何度も頭の中でこだまする。 あぁ、この言葉が欲しかったんだと妙に納得してしまった。 自分が思ってるよりも、この言葉が欲しくて堪らなかったんだ。 俺も不安だったんだ。 「やっと……言ってくれたね」 「えっ?」 不思議そうに俺を見詰める杏が愛しくて、顔が緩む。 「もう怒ってないの?」 「最初から何も怒ってないのよ」 「えっ?あの態度は?」 「忘れたわ」 そう、忘れてしまった。 何をこんなに悩んでいたのかも、苛立っていたのかも。 やはり俺は単純だ。 いや、単純でいいんだ。 杏を愛してるから。 これから先、幸せな時間ばかりではないのかもしれない。 だが、杏と一緒ならこうやって悩むのも悪くはない。 「杏が素直になったから、嬉しくて忘れちゃったわよ」 杏の柔らかい髪を優しく撫でて微笑むと、杏も嬉しそうに微笑んだ。 ありがとう。 こんな俺を愛してくれて。 ありがとう杏。
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