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「ナオ…」
抱きしめるオレに、ビックリした声を出すトオル。
「オレ達…ホント馬鹿だよな。」
「え…」
オレは、トオルの弱い部分を知った。
トオルも、オレの弱い部分を知ってる。
その事実だけで、オレのとんがった心が、丸くなった気がした。
「言葉にしなきゃ分かんねーのにお互い、嫌われんのが怖くて何も言えなくて…そんなんじゃ、分かり合えないのにさ。」
さっきの、嫉妬に塗れた時とは違って、言葉がスラスラ出てくる。
「おまえの事、全部知ってる気になって、知ろうとしてなかった。ごめんな…」
「俺だって!…変な嫉妬して、一人で悩んで…人の事、言えないよね、俺…」
ごめん、と呟くトオル。
二人して、こんな狭いトイレの個室で、座り込んで、抱き合って、謝り合って…
なんだか、その図を思い浮べて、オレは思わず笑った。
「ナオ?」
不思議そうに首を傾げるトオル。
オレは冗談交じりに言った。
「おまえ、もう浮気すんなよ。」
「ちっ、違うよ!元彼とは本当に何もなかったんだから!」
興奮気味に否定するトオルに、オレはまた笑う。
不思議そうに、何度も首を傾げるトオル。
信じる。
当たり前の事なのに、分かってなかったな、オレ。
トオルにも、ちゃんと言葉で気持ちを伝えなくちゃ。
「トオル、大好きだ。」
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