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人気のない漆黒の商店街。
夥しくそこら中に付着する血肉。
散乱する常軌を逸した化け物の死体。
戦場であるかのように荒れた町並みは、まるであの世にいるかのような不気味さを演出する。
「…この化け物め」
激戦があったのだろう。
死戦を乗り越え、酷く弱りきった青年が足を引きずりながら上を見上げる。
バコォンッ
女性の腰ほどもある太くゴツい『巨大な腕』が壁をブチ壊し青年の引きずり込もうとするが、間一髪青年は回避しある程度距離をとる。
「まるで自分だけが人間であるような言い方だな」
野太い威圧感のあるその声が壁の向こう側から鳴り響く。
バコォンッ
壁が完全に崩壊し、漆黒の巨人が姿を現す。
体長3m前後のそれは明らかに人間ではなかった。
暗闇に輝く黄色い瞳、独特のフォルムを持ち合わせた肉体構造。
その化け物は青年を無表情で見下す。
互いに睨み合う青年と巨人。
傍からすればそれは蛇に睨まれる蛙のようにさえ見える。
「何故諦めない?」
「愚問だな。誰が安々とそう諦めるかよ」
青年のその表情に偽りはなかった。
確固たる精神を感じるその瞳には『尊敬の念』さえ感じられた。
全ては数日前にさかのぼる。
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