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「へぇ、離婚だって?」
スーパーの職員用休憩室。
そこに二人の男性がいた。
一人は『相葉』と記されたバッチを身に着けている、20代半ばの若い青年である。
体格とイケメン風の顔つきのわりには、随分とテンションが低くシャイなイメージを受ける。
もう片方の席にはエプロンを身に着けた中年男性が座っている。
「あ、気に触るなら別に構わないんだが」
「良かったらその経緯とか教えて欲しいね」
中年男性はタバコを吸いながら、その青年に問う。
青年は無表情で、何のためらいもなく語り始める。
「・・・俺が悪いんです。やっぱり・・・その浮気癖なんていうのは中々治らなくて」
「すると相葉君、一番の理由は君の『浮気』にあるのかい?」
「はい」
「そりゃ仕方ないねぇ、相手が怒るのも当然だ」
「人間はねぇ・・・常に新しい刺激を欲しがる習性があるものだから、ついつい『既にあるもの』をそっちのけにしてしまう」
「まぁ・・・しかるべき罰は受けたんだから、その新しい妻と仲良くしなさいよ」
「いえ、その女性とはもう別れました」
「・・・どうしてだい?」
「せめてもの償いです」
相葉をうつむいて喋る。
それを聞いて上司と思われるその中年男性は関心する。
「断ち切ったのかい?全ての関係を。紳士だねぇ君は、なかなか潔い行動だと思うよ」
「・・・現在は独身かい?履歴書には以前職についていたと書いてあったが、それを辞めた理由も?」
「・・・はい」
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