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地下鉄から降りれば、ボロを纏った男が、何人か転がっているのが見える。
この街で、金が無くても出入りできて、雨風がしのげるのは、この地下街だけだ。
公衆トイレは、オマワリどもに追い出されちまう。
地上に上がれば、空一面に、ネオンサインや、サーチライトが広がっている。
俺はこの街で星を見たことがなかった。
街はいつものように人で溢れている。
ここには人種も国籍も関係はない。黒人も白人もみんな平等に飲んだくれていた。
人種と言えば、この街に来て、中国人と日本人の区別がつくようになった。
いかにも金を持っている雰囲気のくせに、間抜けで警戒心がなくて、英語が通じないのが日本人で、そうじゃなければ中国人だ。
「Hello!」
と、声を掛けて、一瞬目が泳げば日本人決定。
女ならバッグの中、男なら内ポケットの中の財布をせしめる。
俺は財布の中の現金だけを抜き取って、あとはホテルに届ける。日本人は律儀だから、必ずお礼に日本の食べ物をくれる。
珍しいし、友達にも自慢できるし、美味い。
俺は日本人が大好きだ。
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