皇子

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皇子

「お前の名を教えてくれないか?」 喜ぶショーンに男は問いかける。名無しの人物でもないだろうから何らかの名前くらいはついていると思った。 「俺はショーンだ…」 いつもなら偽名を使うのだが、自ら本名を答えていた。危険があるかもしれないが思わず答えてしまった。 「私はアブロサムだ…」 名を明かしたショーンに男は自分の名を教える。アブロサムとは旧約聖書に出てくるダンテの息子の名である。 そして、王族の継承者でもあったが易々と正体を明かす訳にはいかない。そこでただの貴族という設定にした。 「アブロサム?なんか聞いたことがあるような名前だな…」 ショーンはアブロサムという言葉に何か引っかかった。 「ああ…旧約聖書に出てくるダンテの息子の名前だろう」 ショーンの様子を見ていたアブロサムは自分の名前の由来を教えた。 「そうだな…」 違う気がしたショーンは、 何か思い出そうと記憶を辿るが判らなかった。 「もう時期夕食だからお前も食べるがいい…その間に風呂で砂漠の砂を落としてきたらどうだ?」 アブロサムは、食事まで砂漠の砂埃を落として来るようにショーンに風呂を進めた。 「体中砂まみれだから助かるぜ!」 すると、服から体中まで砂漠の砂埃に覆われているショーンは嬉しそうに答えた。 「風呂場は何処だ?」 ショーンは立ち上がり辺りを見渡して風呂場を探した。 「浴場はあっちだ!使いに案内させよう…」 アブロサムはそばの使いを呼び寄せて、浴場の案内を言いつけた。 「こちらです…ついてきて下さい」 使いはショーンに寄り、案内をするから付いてくるように伝える。 「悪いがあと服も貸して貰えないか?コレしかなくてよぉ…」 服が着ている囚人服しか無く、着替えを貰えるか聞いてみる。 「分かった用意させよう…あと酒と女もいるだろう?」 ショーンの服装から分かっていたアブロサムは手元のベルを鳴らして、別の使いを呼び寄せて服を用意させる。 「ああ…頼む!」 ショーンは、砂の着いた体を痒そうに掻いてながら案内の使いと屋敷の浴場へと向かっていった。 「ショーンか…なかなかおもしろい奴だな」 姿が消えたショーンにグラスにワインを注ぎ、口に近づけて流し込むとアブロサムは唇を弛ませた。
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