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「痛ぇし…」
オレはひくりと眉を顰めた。
旅行へ行くと言って大家が猫を持ってきた。
大体ココ、ペット禁だし。
手前の都合でそれもいいらしい。
真っ白ですげぇ目がキレーな猫だ。
ひょいと首輪とそこらへんを掴んで、取り合えず部屋に放すことにしたけれど…。
放そうとした瞬間、シャッと爪で手の甲を引っ掻かれた。
見事に赤い線が浮かびあがった。
とにかく、暴れるは落ち着きはねぇはで。
そんなんで一晩を送り、翌日面倒を見るのがもう嫌になったオレは。
「加持、今日ウチこねぇ?」
押し付けることにした。
第一オレ自身、猫というか加持以外に興味がねぇんだから、薄情と言われても知らねぇ。
「ん、あ?別にいーけどよ」
ん、もあ?も別にも要らないところだが、それはヨシとして。
取り合えず、いつも寄るコンビニへと入った。
絶対自分で買ったところを見たこと無い雑誌コーナーへ、加持は一目散。
ペラペラと数冊見て(ざっとみてゆっくりと見るのは学校で誰かが買ってきたやつを見るのだ)そのまま、ドリンクコーナーへ。
その後を追うようにして奥へと向う。
その雑誌コーナーの反対側に、猫の顔が描かれた缶詰。
そいや、エサが無いんだったとソレを手にした。
どれでも同じだろう。
適当に手にしたところで、
「何?お前ソレ食うの?」
しゃがむオレを加持が見下ろしてきた。
手にはいつものレインボー色した缶コーヒー。
「違ぇーよ」
立ち上がると、少し加持を見下ろす形になる。
じゃ、何だよ。と見上げる瞳が可愛い。
この角度ってすぐにキスできるから正直やべぇんだけど、加持はそんなの知らない。
「猫居んの。」
まぁキスなんて家に着いたらすりゃいいかと、3つほど缶を手にし、スポーツドリンクを棚から取り出す。
そうして、後ろを振り返れば
「猫!?」
嬉しそうな加持の顔があった。
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