エピローグ

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目の前の少女、佐伯千鶴。 昨日まで死を望んでいた彼女が、苦を乗り越え、そして今家族と一緒に前を向こうとしている。 そんな彼女の決心を後押しをすることができたという事実が、むしょうに嬉しかった。 「それなら、安心ですね」 「ええ。これも天条君、全てあなたのおかげよ。本当に感謝してる」 自分は、手助けをしただけ。 今回の依頼を解決に導くことができたのは、全て佐伯千鶴本人の力のおかげ。 ―――条一の脳内にはすぐにそんな思考が巡ったが、そこは口に出さずグッと我慢。 彼女が、お礼を言ってくれているのだ。 自分は、それをありがたく頂戴すれば、それで良い。 そうでなければ、また雪城にスケッチブックで頭を叩かれてしまうだろう。 「こんな俺がお役にたてたのなら、幸いです」 「あなたらしい答えね」 千鶴はそう言って、仰ぐように空を見上げる。 「でもね、天条君。 実を言うと、私、最初は不安だったのよ?」 「へ?」 「社会的に殺すのが流儀だとか言って、一向に私を殺してくれる気配が無いし、それどころか、私の過去を詮索して、自ら危険へと飛び込んでくる。 ……見ていて、ずっと冷や冷やしてたわ」 「あー……、すみません」 たしかに改めて言われると、大分千鶴に迷惑をかけてしまっていたことに気がつく条一。 今更ながら、自分の不安定な仕事ぶりに自責の念を抱いてしまった。 だが、対する千鶴は、そんな条一を一瞥して、ゆっくりと歩み寄ってきた。 「それでも今なら、あなたで良かったと心から言えるわ。 いえ、あなたじゃなければ駄目だったと思う。佐伯千鶴は死んでいて、今も形だけの綾乃が生きていたと思う」 「……千鶴さん……」 「これできっと、綾乃も安心してくれるわ。あなたは、私達姉妹二人を救ってくれたのよ」 条一の目の前まで近づいた千鶴は、そのまま自身の右手を条一へと差し出してきた。 「ありがとう、殺し屋さん」     
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