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ーーーーホームに電車がまいりますーーーー
単調な、駅員の声。
乗り慣れた電車が近づいてくる。
しかし稜は幾分強ばった顔で、その電車を迎えた。
「今日こそ…」
今日こそ、絶対やってやる!
はぁっと大きく息をつき、稜は力強い足取りで電車に乗り込んだ。
「俺、今日もやっちゃった~」
「うわ、お前もやるねえ」
教室で飛び交う武勇伝を、稜はいつも苦々しい顔で聞いていた。
今稜の悪友の間で流行っている『度胸だめし』。
それは通学中の満員電車内で、女の子に痴漢をするといった悪趣味なものだった。
いけないことだとは解っている。
ただ血気盛んな若者にとってはそのスリルがたまらない。
捕まったらどうしよう…と先のことを考えると、稜はどうしても出来なかった。
まわりから小心者扱いされても、黙って耐えていたのに。
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