境界を越えて

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「な、なんだなんだ……?」 頭上に街灯があるわけでもないのに、突然陸斗を中心にゆっくりと真っ白な光が周囲を包み込んでいく。 その温かさはまるで母親の腕に抱かれている時と同じような優しいもので、陸斗は体がふわふわとするような感覚を覚えた。 まさか未確認飛行物体によるキャトルミューティレーションとも思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。 というのも、その光は頭上から降り注ぐものではなく、陸斗の足下から発生していたものだったからだ。 「なっ、なんだなんだ!?一体何が起こってるんだ!?」 ごく平凡な人生を送る際にはまったく起こり得ないであろう事態に陸斗が困惑している間にも光はさらに勢いを増して彼を包み込んだ。 目もまともに開けられないほどの閃光の中、陸斗は足下の地面に光の先が走り、何かファンタジー系のゲームの中で見る複雑な図形を描き出しているところを微かながら目撃した。 「う、うわあぁぁ――――――っ!!」 その映像を最後に、陸斗はゆっくりと宙に浮くような感覚を覚え、ギリギリで保っていた彼の意識は真っ白な光の中に溶け込むようにして消え去ってしまった。
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