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兵衛は上半身の服を脱ぎ捨てた。服を脱いだ老体の身体に、心臓を中心に奇妙な文字を円を囲いながら描かれていた。
それを見た怜翠は険しい表情がそれ一層に険しくなった。
「爺ぃ……!やっぱりテメェ……!」
「もう貴様らは終わりじゃ!!ひゃっひゃっひゃっひゃ!!」
そう兵衛を叫びんだ瞬間、その奇妙な文字が消え、兵衛を中心に巨大な竜巻が激しく渦巻いた。
「ちっ……!」
「うわぁ!?」
木々が激しく揺れ、小さい木は粗ぶる風によって凪ぎだをされ、小動物たちは空高く舞い上げられた。
ようやく風が収まり、そしてそれと同時に空へ舞い上がった木や小動物たちが、空から落ち地面に叩きつけられた。
だが、そんなことを気にしている“暇”がなかった。何故なら、膨大な風の精霊を従えている兵衛が目の前にたたずんでいたのだから。そう、言うならば和麻が目の前にいる。そう煉は感じ取った。
「そんな、どうして…!?」
「ひゃっひゃっひゃ!!これがわしの力よ!!」
普通ではありえないほどの風の精霊を身にまとい、兵衛は甲高い声で嗤う。それは完全に自分の勝利を隠したように。だが――――
「違うな……」
「何?」
怜翠はジッと兵衛の顔を見た。そして怜翠は
「それはお前の力じゃない。他人の借り物だ」
和麻と同じような台詞を兵衛に振りかけた。
「だ、黙れぇぇぇぇええぇぇ!!!!!」
兵衛はその言葉で怒り、右腕を大きく縦に振った。と、それと同時に怜翠は煉を押し出すよう横跳びをした。
さっきまで怜翠と煉がいた場所は兵衛が作り出した強大なカマイタチで地面は割れ、抉れ、その先にあった山が吹き飛んだ。
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