若き日の私へ

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 二週間前、東京に住む姉から電話があった。 「ちょっと事情があって、息子と娘を預かってくれない?」  姉の声は焦るような追い詰められているような、汚い感じがした。 「何故なの」  と私は訊いた。 「理由は訊かないで」  より汚い声で姉は言った。  私の姉は八方美人だ。昔からそうだ。  両親いわく、私が生まれたときかららしい。自分に興味を向けさせるため、自然と身についたのだろう。  私は車を走らせた。目的地は駅。そこで姉の子供達を迎える。  車は中古で買った白いセダン。私にはお似合いだと思う。  姉が最初に付き合った男が持っていた車も白いセダンだった。姉が小学六年の頃だ。そのときの私は小学一年だった。  目に余る、と言った言葉がそのまま当て嵌まる。気持ち悪い存在だ。  相手は真性のロリコン。どう考えても犯罪だ。  恋愛感情なんぞ無かったのだろう。いや、有るはずがない。
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