第四章 自由の味

11/12
287人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
       21 つぐみはベッドに寝そべり、天井を見ながら思わず笑みがこぼれた。 好きな時に出掛け、好きな物を食べて、好きな物を買う、そして何でも話せる友達に、憧れの男性がいる。つぐみは自由と同時に多くを手にしていた。 最初は人を殺すなんてとんでもない事だと何度も躊躇したが、行動を起こして正解だった。ずっと夢見ていた事が現実になったのだから。十代の頃の自分に知らせてやりたかった。さすがに高校生じゃ実行に移せないだろうが、今はその時の苦しみをすっかり解消出来ていた。 ドアをノックする音と共に、渡部の声が聞こえる。 「お嬢様、お風呂の準備が出来ました。」 「わかったわ。」 つぐみは笑顔でベッドから立ち上がる。 「お嬢様、一つだけ言わせて下さい。」 「何かしら?」 「社長が亡くなってあまり時間が経ってません、あまり破目を外さない様にして下さい。」 「わかってるわ、そんな事言わないでちょうだい。」 つぐみは不機嫌そうに言うが、渡部は表情を変えない。 「事情はわかっているつもりです。しかし…」 「どういう事?」
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!