悲しみの連鎖を

3/13
2530人が本棚に入れています
本棚に追加
/288ページ
「失礼します。1年5組の長野葉月です。化学のノートを出しにきました。入ってもいいですか」 「はい、どうぞ。長野さん、何だか雰囲気変わったね」  入口にいた、あまり面識のない女の先生に話しかけられ、とまどう。 「そうですか?あの、私の名前、どうして知ってるんですか?」  先生はにっこり笑った。 「目立つから」 「そんなはずないです…」  目をふせる。 「まあ、自分ではそういうの、わかんないものだしね。最近はさらにぱあっと輝いてる感じで、そういう変化はいいなあと思ってたのよ」 「えーっと…ありがとうございます」  とりあえず頭を下げる。  恥ずかしい。でも、嬉しかった。  こうして少しずつ、自分を変えていこう。前向きにそう思える。  ノートを担当の先生の机に置き、職員室のドアを閉めると、私はパタパタと小走りで音楽室へ向かった。  窓が開いていて、廊下じゅうにさわやかな風が通っている。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!