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自らの下着を売るのに、楠木 有佳里(くすのき あかり)はすっかり抵抗感をなくしていた。最近はオヤジだけではなく、若い男も増えてきたので楽になったのもある。
今日の客は、30代半ばの会社員らしい男だ。
「ありがと。はい、1万ね」
「サンキュー」
「ちゃんとシミ付き?」
「もちろんっすよ~」
有佳里は笑う。もちろん作り物の笑顔だ。ビジネスに、本当の笑顔など無意味だからだ。
「じゃあ、またね」
「またねー」
またも何も会う気0ねぇからメール来ても無視するからな変態め。有佳里は心の中で毒づいた。
男はそんな有佳里にかまわず、路地裏から出ていった。
「・・・・・・はあ」
有佳里は溜め息を吐く。
───今日は、もう休もう。
いつもなら深夜の2時くらいまでやっているが、今日は客が多く儲けも多かったので、10時に終えることにした。
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