第3話後編『新月の夜に盃を』

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「…っ!?」 魔理沙が力強い声を上げると同時に、膨れ上がる魔力。 あれだけの魔力を放出したにも関わらず…いや、そもそも人間として、あまりに規格外なその魔力の大きさに、レミリアはほんの僅かに怯んだ。 (ここに来てこの魔力…!? どこにそんな余力が――いや、そもそも魔理沙は…) 「迷ったね、吸血鬼さん」 で、その隙を見逃さないちょーカッコイイ少年が一人……どうも久しぶり。一応主人公の鍵屋です。 「なっ!!? 貴様何故…「くらえ必殺『そこら辺に落ちてた槍で背後から心臓ドスッ☆』!!!!」 今まで10ページ近くシカトぶっこかれてた怨みを込め、動揺で動きを止めたレミリアの心臓目掛けて、メイド妖精の槍をぶん投げる。 しかし、流石は吸血鬼、このナイスピッチングを…いや完全な不意打ちを、身体を捩って急所を外して見せた。 …だが、 「…っ…ぐっ…!!」 「お嬢様!!」 流石に、避け切る事は不可能だったらしい。 僕の投じた槍は、レミリアの腹あたりを捉え、さっきのうどんげの再現のように、ぐっさり刺さってくれた。 しかし、やはりそこは吸血鬼。人間なら明らかに致命傷の一撃を貰ったというのに、苦しげな表情を浮かべながらも踏み止まり、僕を睨み付けて来た。おおこわいこわい。 「…貴様ぁ!! よくもそんな卑怯な真似を…!!」 「うん黙れ。君にだけは言われたくないかな」 「…っ! ――紅符『不夜城レッド』!!」 レミリアの宣言と共に、雷のような真紅の炎が、僕目掛けて襲い掛かる。 今までのような、見てからグレイズ余裕でした…なんてものじゃない、超高速の雷。 まあ当然、そんなもの僕が避けられる筈もねえので、 「――『フィールドウルトラレッド』!!」 そこは、鈴仙に任せる事にしました。 「ナイス鈴仙。後は任せな」 「もう…兎使いが…荒いんですから…」 「うどんげっ!? お前…!」 「話は後だ魔理沙! 一発デカイの頼む!」 「…ぐっ…このぉ!!」 復活していた鈴仙に驚く魔理沙に、僕が短い指示を飛ばすと同時に、再び僕へと向かって牙を剥く吸血鬼。 どうしても僕をぬっ殺そうってつもりだろうか? そうかい、是非そうしてくれ。
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