邂逅

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邂逅

時々思う。 それは眠れない真夏日の夜であったり、逆に真冬の凍える寝床だったり。 子供の世界は。 子供の世界は、何処へ行ってしまったの? あの、暗がりを恐れて、毎日に不思議があった世界はどうなってしまったの? 怒られる理由が分からなくて、何故だか分からなくて。 僕は早く大人になりたかった。 なろうと思っていた。 でも、大人は難しそうだから別にいいやとも思っていた。 子供の世界は気楽で、大人の世界は息苦しい。 息を吸いたいけれど、吸ってしまうのが怖くて。 昔は普通に吸っていた空気なのに。 どうしてなんだろう。 育っていくと同時に、子供の発想はどんどん塗りつぶされて、色褪せていく。 苦しいから、何かが首に巻きついていることに気が付いてみてみると。 それは自分の手だった。 ぐいぐいと力を込めて万力のように締め上げていく。 夜店で買った金魚のようにぽっくり逝ってくれるんじゃないかと思って。 ぐい、ぐい、と。 どんどん力は強くなる。 強くする、強くしなくちゃ。 でも、気が付くとそれを見ている人がいた。 僕はつい、本当のことを語ってしまう。 そう、人間なんてそんなもの。 「お前はそういうことが出来るやつなんだよ。」ああ、そうですか。 そうですね。 「普通は思ってもやらないの」 だよね。 そうだよね。 知ってるよ、知っている。 僕もやるつもりなんか無いもん。 やりたくてやったんじゃないもん。 「オマエオカシンジャナイノ」 かもね、そうかもね。 きっとそうさ。 その通りなんだろうさ。 でも、もうヤダヨ、もう飽きたよ。 生きていたいけど。 それでも、未来には絶望しかない。 知ってるよ、僕が首を絞めたの。 知ってるよ、僕が気持ち悪いの。 知ってるよ、僕が本当は嫌いでしょ? コンナコトスルヨウナコジャナカッタハズナノニ。 じゃあ、今の僕は何なのさ?
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