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五月の半ば。
出会いと別れが激しく入り交じる時は過ぎ、新しい生活にもなれてきて、適度に緊張がほぐれる頃。
暖かい日差しが差している堤防沿いに、眠ったまま大きなあくびをし目尻に涙をためている少年がいた。
少年の名前は吉岡弘(よしおか ひろし)。薄い金色の髪が肩までのびていて、その髪は寝癖なのか癖毛なのかボサボサだ。
柔らかい緑の草の上に寝転び気持ち良さそうに静かな寝息を立てている。
「はっはっは。いさむ~、バカじゃねぇのぉ…」
寝言のようです。
太陽の昇っている位置からして、いまはもう十時過ぎのように思える。朝もやもはれていて、とても清々しい川の碧が目に心地よさを与えていた。
すやすやと眠っている弘のそばに、動く小さな白いモノが近寄ってきた。
白いモノは弘の顔を精一杯背伸びして覗き込んだ。小さな足がプルプルと震えている。相当頑張っているようだ。
穏やかな寝息を立てる弘の鼻を、白いモノは恨みでもあるように思い切り(多分)殴った。
「キュゥ〰〰…。」
殴った方がいたかったようで、白いモノは小さな腕(?)を片手で擦りながら抱えた。
「ん、なんだぁ…」
殴られた方は痛くなさそうだ。
弘は、目をこすり上体をのっそりと起こした。いかにも眠そうです…。
「おお、米太郎(よねたろう)、何してんだ?」
「キュゥー、キュゥー!」
米太郎と呼ばれた白いモノは、小さな手足をふって何か伝えようとしている。
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