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「…………」
入学式。
今日から僕は、高校生になった。
新しい制服、新しい鞄、新しい生活。
学校の校長先生だと思われる人(緊張でろくに見てなかった)の話を長々と聞いてから教室に行き、高校生初のHRを体験したあとの放課後。
下校時刻を過ぎても、生徒で賑わっている廊下でだった。
初めて彼女を、見かけたのは。
(やけに背が小さいな…)
ふと、向こうからやって来た違和感のある小さい人物に、僕は首を傾げた。
少し距離があるから、感覚が正確じゃないのはわかっていたのだけれど。
そのうち段々距離が近づいていって、その感覚が嘘をついていないことがわかった。
(ま、マジで…小さ…)
いくらなんでも、小さ過ぎじゃないか?
幻を見ているのかもしれないと錯覚してしまうほど、僕が凝視している人物の周りには、不思議な雰囲気が漂っていた。
まるで、彼女の世界だけが隔離してしまっているような───
───っ!
時間が、止まった気がした。
僕は慌てて後ろを振り返る。
彼女の姿は、ない。
風が吹いて桜のハナビラが舞って、僕が思考を回転させるより早く彼女が僕の横を通り過ぎて──
僕は確信した。
彼女は──
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