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「そりゃあ、そうさ。存在自体を消しちまったんだから。」
煙と共にテールが隣りに現れた。
「もうっ!!いきなり現れないでよっ!!ところで、どうやって石から抜け出したの?アンタ今まで石から離れた事なかったじゃない?!」
「あぁ?俺がいつ石から離れられねぇつった?確かに遠距離で離れる事は出来ねぇが、この家ぐらいは自由に行き来出来るぞ。」
テールは、不機嫌そうに細くて黄色い目を私に向けた。
「ところで、それオメェ達でいう『アルバム』ってヤツか?
かぁ~っ!俺には分かんねぇ~!過ぎちまった事をイチイチ紙切れにして、残す神経がっ!!」
テールが両手で頭(耳?)をクシャクシャと掻き分けた。
その間に、蘭はアルバムを一ページずつめくり、写真を一枚ずつ眺めていた。
めくる度に忘れかけていた思い出が蘭の脳裏に蘇る。
―凜が3才の時、縁日で迷子になって皆で探した事―
あの時、凜は神社の軒下に居て、泣きながら私に抱きついて来たっけ。
―私が10才になる誕生日に、お小遣いで小さなケーキを買って来て、お祝いしてくれた。
普通のショートケーキより小さかったけど、どのケーキよりも一番美味しかった。
そしてなによりも――
―私が落ち込んでいる時に凜がいつも言ってる事―
「元気出して、お姉ちゃん。私はいつだって、お姉ちゃんの味方だからっ!」
…………パタッ
「えっ?」
泣いてる……?どうして……。
ああ……そっか……。
どんなに生意気でも、どんなにずる賢く見えても
―凜は私の大事な妹なんだ―
「……ねぇ、テール。」
「んっ?」
「分かったよ。妹を返して欲しい理由が。」
「本当か?!ならさっさと言いなっ!取り消しは早ぇ方が楽だ!!」
「でも、今日入れて後四日残ってる。悪いけど、その日まで待っててくれない?」
「何でだ?早く取り消せば、オメェも肩の荷が降りんだろう?」
「自分の考えが本当に固いものなのか確かめたいの。今までみたいに後で揺らいだら何の意味もないから。」
「うーん…。」
テールは腕を組み、困った様な表情をしていた。
だが、しばらく経ってから顔を上げ、回答を待つ蘭に向き直った。
「分かった。それじゃあ提起した通り三日後まで待とう。但し、オメェが心変わりしたとてもしなくても俺は言われた通りの事しかしないからな。」
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