第12章

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太乙真人は考えた。 (確かにナタは物知らずな事から、誤って敖丙を殺してしまった。しかし、これも天命というもの。敖光は竜の中の王で雲や雨を司る身、天帝の定めた気数を知らぬ訳もなかろうに、この様な小事で天庭を騒がすとは、どうりをわきまえぬ奴だ!) そして、ナタを呼ぶ。 「ナタ、おいで。衣を解いて胸を出しなさい」 そして、指でナタの胸に道符を書いた。 「よいか。天の宝徳門(ホウトクモン)に行ったら、これこれこの様にするのだ」 と、細かく言い聞かせる。 「いいな、事が終わったら陳塘関へ戻り、お前の父母に言うのだ。もし、事が起こったとしてもこの師父がおる、決して貴殿方には迷惑はかけないとな」 「はいっ!」 すっかり元気になったナタは乾元山を離れ、その足で宝徳門に来た。 天宮の景色はまさに非凡で、紫雲や赤雲が碧空(ヘキクウ)をおおっていて、下界とは全く様子が異なっていた。 時間が早かったのか敖光の姿は見えない。天宮の各門もまだ開いてない。 それで、聚仙門(シュウセンモン)の下に立って敖光を待つ事にした。 しばらくすると、敖光が朝服をまとい、慌ただしく南天門にやって来た。 しかし、南天門はまだ閉まっている。 「早すぎたか。黄巾力士(コウキンリキシ)がまだ来ていないようだ。仕方が無い、ここで待とう」 ナタからはその敖光の姿が見えるが、敖光にはナタが見えない。 太乙真人がナタの胸に隠身符(インシンフ=身隠しの秘文)を書いた為、敖光にはナタの姿が見えないのだった。 ナタは、敖光が待っているのを見ているうちに怒りが込み上げてきて、我慢が出来なくなった。そこで、つかつかと歩み寄るなり、突然手中の乾坤圏で敖光の首をがっと打った。 敖光はたまらす前へつんのめって倒れる。 ナタは、そのまま敖光の背を踏みつけた。        ━続く━
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