act.2 優しくも聖なる光

37/52
2596人が本棚に入れています
本棚に追加
/498ページ
「転校生さんはまだ済ませてないと思うっスけど、この学園に入学する際には、念のため魔力回路に特殊な『施錠』をするっス。故意に誰かを傷付けたり、私欲のために悪用しようとすると、これが働いて魔力が使えなくなるんスよ。だから、転校生さんが心配してるようなことには絶対にならないっス。魔法はあくまで人を助けるための力なんスから」  朗らかな口調で「大丈夫っス」と繰り返す裕樹に、白兎は強張った表情筋を少しだけ緩めた。 「なかなか良いことを言うじゃないか双海。授業中の私語は感心しないがな」  ――不意に名指しで呼ばれ、裕樹が驚いたように顔を上げる。釣られて白兎も視線を向けると、こちらを睥睨(へいげい)する銀朱の眼差しに心臓を射抜かれた。  二人揃って慌てて謝罪し、授業に集中することを誓約。「よろしい」と銀朱が妖しく微笑んだ。 「双海の意見に補足して説明するが、施錠の効果が発揮されるのは外界に出た場合のみで、この学園内は対象外だ。つまり、今ここでお前たちを丸焼きにするのは何とも容易い話なんだよ。……そのことを努々(ゆめゆめ)忘れるな」  遠回しかつ残忍な死刑宣告を前に、ただただ頷くしかない白兎。“授業は真面目に受けるもの”という固着観念を、今一度脳に刻みつけておく。
/498ページ

最初のコメントを投稿しよう!