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「ここまで話したが、何か質問はないか? ないなら出席番号順に前に出ろ。現時点でどれ位の魔法が扱えるのか、一人ずつ見せてもらう」
突然の銀朱の提案に、生徒たちはあからさまに嫌な顔をした。魔法を展開するには魔力を消費する、それは即ち、多大なる精神的疲労が伴うことを意味している。結局は、一限目の授業からそんなに面倒なことをしたくない、ということだろう。
「駄々を捏ねても無駄だ。それとも出席番号というのがネックなのか? だったら実力に自信がある者から出るといい。その蛮勇さもちゃんと評価するぞ」
困惑する生徒たちを心底愉快そうに眺めながら、取り出した煙草に火を点ける銀朱。
「朱月先生ってばとんでもないことを言うっスねぇ……。あれだけ凄い魔法を見せられた後で、自分から前に出る人なんて普通いないっスよ」
「まあ、そうだよな……」
白兎は素直に頷くと、周囲を軽く一瞥した。強張った表情を見る限り、誰もが同じ事を考えているらしい。依然、動き出す者は皆無。いつの間にか静謐とも取れる沈黙が流れ始めた頃、一人の少女が抑揚のない声音で進言した。
「私がやります」
それは【雷帝】――黒峰栞の声だった。纏う雰囲気に一切の虚勢はなく、力強い双眸で銀朱を見詰めている。
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