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「僕は……身近にいる人を守る力が欲しい。
たとえちっぽけでも」
少年は素直に口にする。
彼女には嘘をつきたくなかった。
「確かに父さんを見返したいと思ったこともあるよ。でも、家を出て何だか吹っ切れた。
バカバカしく思えた」
「…………」
彼女は黙って少年の言葉を聞いている。
「うまくはいえないけど」
「いいえ、十分ですわ。
復讐などをしてもあなたの心がはれることはありませんわ。ただ空しさが残る」
彼女の瞳の中の光が揺れた。
「もしも」
「?」
「もしもアナタの【自由】が束縛されるとしたら、それでもアナタは【力】が欲しいですか?たとえ、『人生を差し出しなさい』と言われたら、アナタはどうしますか?」
「僕は……」
すぐに答えられない。
彼女の言葉のすべてを理解できなかった。
「わからない。
すぐに答えられるほど簡単な問題じゃないから」
「そうですわね」
彼女は頷いた。
優しい表情で。
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