プロローグ

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「私といれば答えが見つかるかもしれませんわ」 「えっ?」 キョトンとする少年に彼女は手を差し出した。 「私はアナタが気に入りました。アナタになら私を……私のすべてを差し上げてもいいと思いますわ」 「すべて?」 「はい。私の地位も。戦う術も。なにもかも差し上げます」 ごうっ!と風が吹き抜ける。 凄まじい音が鼓膜をぶっ叩き、海上にいくつも竜巻が出現していた。 船を囲むように。 「キミのすべて?キミは一体何者?」 「私のことが知りたいのなら、さあ手を取ってくださいな。この船はじきに沈没しますから」 少年ははっ!として振り返った。 言われなくてもわかっている。 高波が迫っている様が肉眼でもしっかり確認できた。 激しい左右の揺れが船を襲い、さすがに少年は甲板に倒れた。 だが、彼女は平然としている。 「僕だけ逃げることなどできない」 少年は呻くように言った。
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