依頼×出国

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依頼×出国

+  某雑居ビルに、ロウレニス探偵事務所と書かれた看板が取り付けられている一室がある。  そこはあらゆることを引き受ける探偵事務所だ。  例えば殺人事件であったり、誘拐事件であったり…………。  と、考えて事務所の主ロウレニスは思考を放棄した。  考えれば考えるほど、現状との差に涙が出てくるからだ。  なんでも請け負う、その体制と気位はある。  殺人犯だろうと誘拐犯だろうと、なんでもこい、いつもそう決めているが……。  現実はいつも厳しい。  なんでも請け負う、その体制が裏目にでているのだ。  人々は皆彼をなんでも屋のような感覚で物を頼む。  その主だった依頼は『低収入の迷子ペット捜索』だ。  おかげで大した利益も上げられず、一時期は水道や電気、ガスも止められて生死をさ迷うこともあった。  だが二年前にある吸血鬼と出会い、そして彼女と解決した事件――これもペット探しが事の発端だが――がきっかけで事務所にはかの有名な『ハーベルデング株式会社』という大きな後ろ盾を得ることができた。  それはとても幸運だと思う。
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