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開いた口が塞がらなかった。
安田さんの股関には、立派な男の子の証しがついていたからだ。
頭が混乱し過ぎてめまいがする。
私は床にへたり込んで口をパクパクとするしかなかった。
安田さんは頭をポリポリかいてからまたパンツとスカートを履く。
「これで分かったでしょう?海斗は…」
「ホモ…だったんだ…」
ズルッ!
安田さんががっくり肩を落とした。
「何でそうなるのよ…確かに私は男!だけど、心は女なの!だから…バラすのも嫌だったからあなたをこうして混乱させてしまったんだけど…」
安田さんは服を全て着ると吸いかけのタバコをまたくわえる。
「…海斗とはね、海斗が会社を立ち上げた時以来の親友なの。もちろん、その時はまだ体は男だったわよ。でも海斗は女になりたい私の意志を分かってくれて…。今お金を貯めながらちょっとずつ体を工事してるの。次はココ!」
安田さんは嬉しそうに自分の股関を叩いた。
でも…やっぱり不安は拭えない。
「あの…安田さんは…海斗の事…?」
「好きよ。…友達としてね。私、恋人いるもの。」
その言葉に一気に体の力が抜ける。
なんだ…。
じゃあ浮気じゃなかったんだぁ…。
安心して涙が視界を塞いだ。
ん?
でも確かにあの時二人は社長室で…
「あの…じゃあ社長室での件は?」
「ああ!あれね!創立パーティーに彼氏と出席するのに海斗に見立ててもらってドレスを選んでたんだけど…ドレスに躓いて転んじゃって!慌てて海斗のネクタイ掴んだもんだから一緒に倒れちゃったのよ。」
なんだぁ…。
も~…。
私ははぁ~とため息をついて床に寝っころがる。
安田さんはタバコの火を消すと、私の顔を覗き込んだ。
「…ごめんなさいね。二人を混乱させて…。安心して、私は…今の恋人を愛してる。海斗と恋愛なんて、例え男が海斗しかいなくても有り得ないわ!」
安田さんが優しく笑う。
すごく安心する笑顔だった。
でも…。
全てが誤解だったと分かった今。
私は…海斗の話しも聞こうとしないで海斗を責めた。
傷ついたのは、私じゃなく海斗の方だ。
ガバッと起きあがると、安田さんが笑った。
「…そう来なくちゃね。結城は社長室で勤務しております。…早く仲直りしてらっしゃい。」
「安田さん…ありがとう!!!」
私は荷物そっちのけで屋敷を飛び出していた。
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