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第三章 【失望と挫折】
結婚を考えた。
Y子に伝えた。
返事はなかった。
うつむいた彼女は、ただ「抱いて。」と。
私を見つめる、あの時と同じ目。
初めて、彼女の涙を見た。貫かれながら、声を殺して泣いていた。
彼女には秘密があった。家族と彼女自身に関する重大な秘密。
双方の家族から、徹底して反対された。
周囲は、二人を引き裂こうと必死だった。
それでも私は、諦めなかった。
でも、周囲に抵抗するのは、私一人と悟った時、若い私に、力は無かった。
やがて、人伝てに聞いた。
私と別れて、ほんの数ヶ月後、他の男と結婚した・・・と。
あの日の涙の理由を知った。
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