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ウィラの一言一言が、サラの首筋に見えないナイフを突き付けてくる。その真意とするところは、「決して動くな」「抵抗しても無駄だ」といったところだろう。
さっきまで軽快なスキップでサラの周りを回っていたウィラは、今度はサラの頭の方へと行き、中腰で座りこんだ。
「あ……ぐ……」
サラが苦しげな声をあげる度に、ウィラの口元には笑みが広がっていく。
ウィラは純粋に死にかけているサラの、苦しんでいる様を見物することを愉しんでいる。愉快で愉快で堪らないといった様子だ。
サラの服も肌も、硬い地面と一緒に赤黒く染まっていく。全身は、見えない鎖で縛られているかのように動かない。
サラの頭の上。屈み込んだウィラが穏やかな笑顔で言った。
「……だからみーんな殺してやった。
……私が憎い?いいわ、もっと憎みなさい」
ウィラはその場から離れると───
「あなたが私を憎めば憎むほど、私は強くなる」
そう言い残すと、ウィラは高らかな笑い声とともに夜の闇へと消えていった。
彼女の笑い声が耳に残ったまま、血まみれで瀕死のサラが発見されたのは、半日経った後だった。
Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.2 初恋・終
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