Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.3 幸と不幸

2/110
634人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
頼れる者などおらず、天涯孤独の身となり、目的もなくあてもなく、流れていくだけの流浪の存在。 結局サラは以前と同じ状況に戻ってしまった。 ……しかしそれでも、サラは生き抜いた。 こんなに頑張る自分は、八年前となんら変わっていない。 そう。 変わらない。 復讐心が。 ぬぐえぬ敗北感があった。 自分は、復讐しなければならない相手に負けたのだ。 それがどういうことなのか、わからないほどサラは馬鹿ではない。 仇を討たなければいけなかった。誰にどう急かされたわけではないけれども。自分はそれだけは忘れてはいけないと心に決めて、サラは八年間を生きてきたのだ。 それは幼い八歳の子供には重過ぎる鎖。憎むべき敵を消し去るまで決して諦めないという、復讐という名の修羅の道。 次に会ったら問答無用。たとえ姉でも即座に吹き飛ばそう───そんなことを考えていると、サラは見慣れた場所に出た。 殺風景より殺風景な外観。およそ生き物の気配とは無縁の、むしろ生き物という存在の観念の無い異空間。忘れ難い、というよりは忘れることのできない懐かしさがまだそこには有り、八年経った今も変わらない雰囲気と冷たさで、かつての支配者を待ち焦がれていた。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!