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「………基君…?」
「麻由美!無事やったか!」
「うん、私は…大丈夫。でも…里田君が…」
「里田がどうしたって…?」
藤原はゆっくりと里田の方を見る。顔色がかなり悪く、青ざめていた。
腕からは血が垂れ、里田自身は痒いのか腕や腹、首などをかきむしっている。
「そ…そんな……」
「感染者になる前の最終段階…ってことか?」
「くっ…どうして俺たちは…こんなにも無力なんだ!」
職員室の中を静寂が包み込む。藤原はその場に座り込み、下を向いた。
「基君…基君は無力なんかじゃないよ。だから…」
「麻由美さん、だっけ?
少しそっとしといてあげよう?色々なことがありすぎて参ってるんだ…」
「そう…ね。ところであなたたちは?」
「俺は池田。こっちが」
「高崎翔です。あなたみたいな可愛い人は初めて見ました」
「……はぁ」
池田がため息をつく。高崎のこういうのは治らないようで手を焼いているのだ。
「人生どんな時でも明るく楽しく生きないとな。幸せが逃げるんやで?」
「…でもなぁ」
「とにかく…早いとこ仲間集めて安全なとこに逃げよ」
「そう…やな」
藤原が小さくそう言った。目的地は市役所か。或いは警察署か。
「市役所か警察署、どっちに行く?」
藤原はその場に居る人間たちに聞こえるようにやや大きめに言い、答えを待った。
「警察署より市役所の方が頑丈そうやけど…」
「確かに警察署よりは市役所の方が良いかもな」
「じゃあ決定、市役所へ行く」
そう言って藤原は動ける者全員を連れて羽曳野市役所へ向かった。
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