第二章・感染拡大

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「………基君…?」 「麻由美!無事やったか!」 「うん、私は…大丈夫。でも…里田君が…」 「里田がどうしたって…?」 藤原はゆっくりと里田の方を見る。顔色がかなり悪く、青ざめていた。 腕からは血が垂れ、里田自身は痒いのか腕や腹、首などをかきむしっている。 「そ…そんな……」 「感染者になる前の最終段階…ってことか?」 「くっ…どうして俺たちは…こんなにも無力なんだ!」 職員室の中を静寂が包み込む。藤原はその場に座り込み、下を向いた。 「基君…基君は無力なんかじゃないよ。だから…」 「麻由美さん、だっけ? 少しそっとしといてあげよう?色々なことがありすぎて参ってるんだ…」 「そう…ね。ところであなたたちは?」 「俺は池田。こっちが」 「高崎翔です。あなたみたいな可愛い人は初めて見ました」 「……はぁ」 池田がため息をつく。高崎のこういうのは治らないようで手を焼いているのだ。 「人生どんな時でも明るく楽しく生きないとな。幸せが逃げるんやで?」 「…でもなぁ」 「とにかく…早いとこ仲間集めて安全なとこに逃げよ」 「そう…やな」 藤原が小さくそう言った。目的地は市役所か。或いは警察署か。 「市役所か警察署、どっちに行く?」 藤原はその場に居る人間たちに聞こえるようにやや大きめに言い、答えを待った。 「警察署より市役所の方が頑丈そうやけど…」 「確かに警察署よりは市役所の方が良いかもな」 「じゃあ決定、市役所へ行く」 そう言って藤原は動ける者全員を連れて羽曳野市役所へ向かった。
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