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(空き物件)
の紙が貼られた建物を、一人ただ呆然と見つめる男がいた。
彼の名は『六道断魔』、四捨五入して30歳。
フリーターであったが、やっとの思いで就職先を見つけ…
そして入社予定日にやって来たら、その就職先は『空き物件』になっていた。
アパートに帰る道すがら、六道は自分の運の無さに自嘲気味に笑いながら、今までの事を思い出していた。
六道は正義感が強く、人間社会ではそれが仇となり上手く世の中を渡れなかった。
彼に後悔の念はないが、まさか自分が命懸けで守り抜いた人間の社会から※村八分にされるとは思いもしなかったのだ。
※ 仲間はずれ
アパートに帰ると、猫が足にすり寄って来た。
『白虎…どうしようか?会社、なくなってたよ…ははは…』
そう言うと彼はなにもない部屋に大の字に寝転がった。
俺にはもう、行く宛てはないのだろうか?
必要ない人間なのか…
そんな事を思いながら、じっと天井を見つめるのであった。
そんな憂鬱な朝、押入れにしまってあった斬魔刀が、妖気を感じてかすかに光っていた。
六道もまだ気づいていないが、闇の扉はかすかに開き再び人の世にその魔手を伸ばそうとしていた。
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