第一章

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     ―1― 三月二七日。入学式、始業式を控えた春休み。 東に設置された窓から射し込む暖かさに満ち溢れた柔らかな春の陽射しを瞼の裏に受け、紅はゆっくりと睫毛を持ち上げる。 柔らかな陽射しと言ったものの、目覚めたばかりの紅にとっては、真夏の強い陽射しに匹敵する程のものに感じられた。 だが、その陽射しが不快というワケでもない。むしろ陽射しなら仕方がないと大きな器で受け入れているくらいだ。あくまでも【陽射しなら】だが。 「――テメェは何でここに……いや、そもそも何で俺の隣で寝てやがるのか、小一時間ほど問いただしてもいいか? いいよな?」 紅の視線は昨夜、超個人的な理由から襲撃してきた少女に向けられている。 ただ、疑問もある。昨夜紅は確かに少女を撒いて一人で帰宅したはずなのだ。だが、そんな疑問も今はどうでもいい。 「…………最近の中学生はけしからん乳をしとるんだな」 けしからんのはお前だ! というツッコミはさて置き。彼の視線は今や中学生の発育途上にありながらも、なかなかに立派な膨らみに釘付けになっている。 話し掛ける対象も《少女》から《少女の乳》へと移行しており、もうどこをどう見ても完全に変態オヤジ化してしまっている。
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