発症

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  彼女の名前は、橋本佳澄。 それがいつからなのか、佳澄は明確に覚えてはいません。 ただ気がつけば『はじっこ』が好きだったのです。 ソファーに座る時、部屋で遊ぶ時、お風呂に入る時、ベットで寝る時、物を片付ける時。 いつもなんとなく、はじっこを選んでしまうのです。 周囲の大人は不思議そうに首を傾げるものの、大低は少し変わった癖と認識して笑うだけ。 佳澄もまた、自分のそれを特に意識した事はありませんでした。 自分ははじっこが好きなんだと、考える事も、わざわざ人に告白する事もありません。 食べ物の好き嫌いだとかそんな物よりももっと、佳澄にとっては自然な事だったのです。 それを人に、指摘されるまでは。  
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