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軽やかなチャイムがようやく授業の終わりを告げてくれた。
僕は大きな欠伸をしながらうーんと両手を伸ばして伸びをする。
春の日差しに包まれた教室はぽかぽかと気持ちいい。
思わず机にうつ伏せて眠りたくなる。
「安藤くん。眠いの?」
そんな僕に気づいたのか、前の席の女の子が声を掛けてきた。
黒茶の細い髪に、くるくるとした丸い瞳。
同級生の伊沢佳奈だ。
佳奈は席についたまま、くるくると胸のタイをもて遊び、暇そうにしている。
「遥は、夜遊びしすぎなんだよ、なあ。デートが忙しすぎて」
突然後ろから、短髪の少年が僕の肩をがしっと掴み、ニヤニヤしながらほっぺたを指でつんつんとつついてきた。
これも僕の同級生で悪友の、前田祐司。
ちなみに僕は、
安藤 遥(はるか)という。
佳奈は、祐司の言葉に眉をひそめる。
「やだ、安藤くん。そうなの?」
やば。これは確実に誤解されている。
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