動き出す心

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その日登校すると麻耶がまた一目散に走って来た。 「聞いてよ美桜。この前のバンドのボーカルね、彼女いるんだって~。ただチケットをさばきたくて声かけてきたみたい」 「そうだったの?」 「あーぁ、がっかり。運命かもって思ったのに」 唇を尖らせるが、それほど深刻なダメージは受けていなそうだった。 麻耶が惚れっぽいのはいつものことだ。 「当たり前でしょ。そんな簡単に運命なんて落ちてるわけないんだから。恋はもっと慎重にしなきゃ」 釘を刺したつもりだったが、麻耶は真剣な表情で言い返してくる。 「なに言ってるの。簡単な出逢いが運命を変えるんだから運命なんでしょ。 恋なんていつ始まるか分からないんだよ?」 分かるような、分からないような気がする。 今まで私にはそんなことは訪れなかった。 ただ、誰もが慎重に冷静に恋を始められたら、いろいろな間違いなど起こらないのに、とは思う。
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