状態変化の観察と推論

いつからか

　私は自我が発生して初めて他の生き物とコミュニケーションを図ろうとしている。が、その途端人間の男の子の興味が私からそれ、どこかに行ってしまった。私は蹴られる前とさして変わらない風景にいた。
　幾度となく夜が過ぎ朝を向かえ雨に打たれ、何匹かの蟻や蛙が私の上を通り過ぎていったが私のいる位置は変わらなかった。しかし、向きだけは微妙に変わっていた。それは私の近くをドルドルと大きな音を立てたトラックが通り過ぎたときだった。地面の振動か車が通り過ぎたときの風か、それを受けて私は私の向きが変わったのを感じた。
　ちなみに周りには仲間が増えた。トラックの荷台からいくつかの仲間が降ってきたのだ。恐らく彼らも自我を持っているのだろうが私達は別の個体に対して興味を持たない。私が意識しているのは私が受ける風、雨、衝撃、そういったものだ。