†Epilogue†

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 マリアの表情だけで何を考えているのか分かったのか、 「私は父上の最低な行為を正し、そして償わせる為に罰する権利を持てる魔術協会に所属したんだ。だから安心しろ。私はマリアを護るよ……。そして、これからも父上の罪の分まで私もマリアと彼女たちに償うと決めたんだ」  そんな理由での帰省だったとはマリアも初耳だったのだろう。彼女は心底驚いた表情で固まっていた。  マリアはてっきり父親の跡を継ぐ為に戻ってきたと、少なくとも継ぐ意思を伝えにきたのだど思っていた。  だが実際は、ルナは自分自身の手でカーティス家の未来を潰えさせようとしていた。  カーティス家の当主が年端もゆかぬ少女の身体を欲望で穢していた事実が知れれば、ルナの家系の権威は地に落ちるだろう。  それも不正を暴く側であるカーティス家の犯罪。家名が没落する程の不祥事。  その事をマリアがルナに伝えると、 「それは分かっている。だが、私は許せないんだ。だから私は何年もかけて、言い逃れされない証拠と証言を集めていたんだからな」  ルナの言う証拠と証言とは、マリアと同じように父親の被害にあった少女たちの事。  その『少女たち』は既に女皇クララの元に保護され、彼女たちの証言を元に父を捕らえる準備も整っている。  しかし、ルナは自分の手で父に引導を渡す事をクララへ進言し、クララもそれを認めてくれた。 「さあ、行こう。マリアたちの苦く辛い過去を終わらせて、新しい明日を迎える為に」 「ありがとう、ございます。でも……、私も彼女たちもルナ様に償ってもらおうとは思いませんよ。もし、そうだとしても私が護ります。ルナ様は……、ルナは私の親友ですもの」  そうして、マリアとルナは自分の手で未来へと繋がる扉を開けた。
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