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「お腹空いたね。なんか食べようか」
平井の言葉に、愛子は頷く。
二人揃って、この動物園の真ん中にあるフードコートに向かった。
愛子は少しでいいからとサンドイッチを注文した。
平井も今は軽くでいいと焼そばを一つ注文した。
「それだけで足りるの?」
愛子は訊ねる。
「足りるよ。なんで?」
平井は愛子の顔を覗き込んだ。
愛子は咄嗟に視線を逸らす。
「ううん、なんでもない」
すでに愛子の目には、平井の言動全てが、悠里のことを思い出させる材料になっていた。
そして、一分、一秒と時間が経つ度に、悠里への想いはどんどん膨らんでいった。
食事を終えた愛子は、静かに口を開いた。
「平井さん、この間の返事をします」
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