act.Ⅱ きらめきマート藤川店

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  「へぇ~どうりでね~」 中谷さんがアタシに意地悪そうな笑みを向ける。 恥ずかしいから少しだけ語り過ぎてしまったことを後悔する。 「藤子ちゃんは彼の正体知らないの?」 「正体って?」 「私、美加子から聞いたのよね~」 あぁとアタシは納得する。 美加子ちゃんは吹奏楽部で午後から音楽室を使う。 午前中使用しているアゲハとニアミスしていても、不思議ではない。 「王子様みたいって」 中谷さんは笑いを堪えてそう言った。 アゲハは王子様に見えなくもないがアタシは普通の男子だと思う。 ちょっぴりピアノ上手なだけの。 「でね玉砕した子が昨日で二人」 アタシは棚に戻しつつあったカップラーメンを手元が狂って、落としそうになった。 「興味ないからって」 その場面をアタシは想像する。 無表情の彼が顔の無い女の子に素っ気なく言うその瞬間を。 少しの優越感に浸りながらも、アタシも何時アゲハに 「来なくていい」 と言われるのか、それを考えてしまう。 「いいわよね~青春よね~。じゃ私トイレ掃除してくるわね」 言いたいことだけ言って中谷さんは、バケツを片手にお手洗いに退場した。 商品棚に残されたアタシは一人悶々とする。 アゲハの正体が知りたい。 彼がどんな理由であそこに存在し何を目的としているのか、アタシは知りたい。 でも、中谷さんからそれを聞いてしまうのは何か違う感じがした。 アゲハから語ってくれるのを待とうと思う。  
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