奈落

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「いい天気だね」 『あっ、朱雀』 「はい、お昼のお弁当を一緒に食べよう」 『うんっ』 元気な凜 いつもと変わらない笑顔 『あっ、サンドイッチだ』 「クスッ、凜用はすぐにわかるね」 『んふっ』 きっとアサが気を使って食べやすいサンドイッチにしてくれたんだろう しかも、トマトだらけ…… 『いただきまーす』 「はい、紅茶」 『ありがとう、朱雀も食べようよ』 「だね」 サンドイッチを一つ取り、食べた 『パンがフワフワで美味しいね』 「だけど強く握ると潰れそうだ」 『うんうん』 紅茶を飲もうとした凜はうまく掴めなくてこぼしてしまった 『あっ、ごめんね……ぐっ……』 「大丈夫だよ、ほら」 凜の口にコップを近付けて飲ませた 『ふぅ……苦しかった』 「ゆっくり食べないとね」 『うん』 そうなんだ 俺が凜のペースに合わせればいいだけの事 慌てる必要はない 動作が遅くてもイラつく必要もない 凜と一緒に居る時間が大切なんだ 『ん?』 「こうして二人で海に来るのは久しぶりだな」 『だね、朱雀は夏バテだったし』 「もう涼しくなって来たから大丈夫だよ」 『よかった』 そう言ってゆっくりサンドイッチを掴みまた食べはじめた 『あっ、食いしん坊が来た』 「ん?」 海を見るとピーチが顔を出して口を開けていた 『これはだ~め!』 (それはなんだ?) 『サンドイッチだよ』 (赤いのは?) 『トマト』 (やっぱり魚の方が美味しそうだ) 『あははっ』 不思議なものだ 凜はピーチと会話をしているように見えた いや、本当に会話をしていたのかも知れないね 凜はイルカ王子なんだから………
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