自殺ショー

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少女はもちろん死ぬつもりだった。 少女といっても17歳なのだけれど。 少女はマンションの屋上に行き、柵を軽々と超え、頬に夜風を浴びながら、今までの事を思った。 今までの事とは、もちろん、彼女が生きた17年間のことについて。 きっと、翌日のテレビには『どうしてあの子が死んだのか分からない』とか『本当に誰に対しても優しく物静かでいい子だった。』なんて、流れるのだろう。 同級生はなんて言うだろう。 誰か一人でも涙をする奴はいるのだろうか。 いや--ー、 きっと涙する。けれど、それは汚れた涙だ。ただ、干渉に浸って、『どう?私は彼女の為に涙を流す心優しい子なのよ』という傲慢な涙に違いない。 私はそれを思うと一種の吐き気のような気分の悪さを覚え、軽い立ちくらみがした。 まずい。 ここで、手を離して死んではまずい。 確かにどうせ死ぬのだがまだお別れをしていない。 こんな私でも少なからず、この世に3人は私を愛してくれたのだ。 ごめんなさい、お母さん。 ごめんなさい、石松先生。 そして、ごめんね、夏美。 これで全部。 この3人が私の全てだ。 つまりはそういうこと。 その3人以外の人がみんな死ぬのか、それとも私が死ぬのか。 答えは簡単だ。 私が死ぬ方がいい。 その方が、とりわけ早いし、みんなもそれを望んでいるのだから。
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