決戦前夜(リリス救出)

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幼い頃によく1人で魔法書を読んでいるカノンを見掛けた噴水広場を訪れた2人は少し離れるとカノンが振り向き、仮面を外した。  「この任務を降りるか、又は受けるか好きな方を選べ」 とカノンは率直な質問を話し、抱き寄せるとリリスを落ち着かせた。 ショックで震えていた為、頭の中が混乱していると考えたからだ。 ゆっくりと自分から下がり、誰にも明かせなかった事を話し出した。  「お父様を説得出来ずに牢獄へ入れられて蟲に触れた時、これから自分の身に起こる最悪な光景を見たの、そしてお兄様が助けに来る事も同様に覚えている」  とある程度予想していた事と思いながらリリスは話し続けた。  「幼い頃は好奇心で気付かない様に努力した、けれど鎖に繋がれたお兄様の姿を見た瞬間、同じ現象が起きたから部屋に忍び込んで調べたの」  「そして予知能力の中でも希少とされる未来予知が自分に備わっていると判った訳か」 とカノンは冷静に答えを言い当てた。 答えまでは分からないだろうと考えていたリリスは俯いてしまい、その姿を見兼ねたカノンは溜息を吐き、面倒だと呟いて誰もいない方向へ剣を向けた。  「そんなに心配なら企んでいないで素直に出て来たら、学院長」 と冷たく言って魔力を込めた。 何時から気付いていたのと聞いて姿を現したエレナにリリスが駆け寄って抱き付き、剣を鞘に納めたカノンはここに来た時から話してベンチに座った。 未来予知だけならまだ良い、両方扱える人間からして見れば幸せな方だよ。  「大切な人達を奪った奴を許す訳にはいかない、死なす事が罪の償い方と考えるなら根底から鍛え直す、変わるまでだ!」 とカノンは言い終わると仮面を被った。  「大喧嘩するなら本気でやれば良い、戦慄の女神さん」 とエレナの別名を口にして離れるとリリスもカノンの腕を掴み、2人は目の前から姿を消した。  「全く相談しても良いのに私が原因なのだから」 と静かに呟くとエレナは振り返らずに帰って行った。
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