偶然

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偶然 中学生の頃、教室に行けなくて相談室登校をしていた時期があった。 苛められたり友達がいなかったわけではないのに、気付いたら誰も信じられなくなって感情を表に出せなくなっていたのだ。 でも、偶然貰った相談室で要らなくなったCDを聴いた瞬間、私の中で何かが変わり始めた。 そのCDには、RAG FAIRというアカペラグループの曲が入っていた。彼らの曲は、どれも素直な気持ちや人と人との関わりの大切さを歌ったものばかりだった。聴けば聴くほど嫌なことが頭から離れていって、時々出てくる可笑しな歌詞に気付いたら笑っていた。ライブ等にも行くようになり彼らを見ているうちに、私も人生を楽しみたいと思うようになった。 徐々に前向きな気持ちになった私は、教室復帰の第一歩として適応指導教室へ通い始めた。 そこで、一つ年上の男子と出会った。彼は、いつでも嫌な顔をしないで相談にのってくれたり、助けてくれた。私が、どうしてそんなに優しくしてくれるのか尋ねると「友達だから」と言ってくれた。 その言葉を聞いた時、とても嬉しかった。そして友達の大切さに気付いたと同時に、私の中から人を信じることに対する恐怖心が消えた。 しばらくして、教室復帰が決まった時に彼は「信じることから全ては始まるよ」と言ってくれた。 私は、その言葉を励みに頑張り教室復帰し、卒業して高校へ進むことが出来た。 彼は、突然どこかへ行ってしまってもう連絡を取ることが出来なくなってしまった。でも、今私は心から人を信じることが出来るようになった。 そして、辛くなったら彼の言葉を思い出したりRAG FAIRの歌を聴いて元気を貰っている。
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