108人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
私は何故ここにいなければならないのかがわからなかった。
かび臭い部屋。薄汚れた明かり。継ぎ接ぎの窓ガラス。
どれもが辛気臭くて、ここにいながら正気を保てる方がおかしいんじゃないかと思う。
世話をしてくれる者も、定時になればさっさと帰る。
誰かが病気になっても、基本は医者等呼ばずに薬を与えるだけで、やはり看病に残る者などいなかった。
私と同じく一緒にこの施設に住まざるを得ない者達とも、私は馴染めなかった。
私は、恐らくこの容姿と器量の良さから…別格扱いをされており、部屋はかび臭くとも個室。体に異変が起これば医師が見に来てくれた。
(もしかすると、私が何処か家柄の良い人達に引き取られた暁には、その恩恵を受けようとしているのかしら?)
自分への待遇の良さをそう考えた私は、馬鹿じゃないの、と呟いた。
私がこの施設を潰す理由はいくらでもあるが、間違っても利益になるような事は一つもしたくない。正直、ここを出たら、こんな施設とは縁を切りたいのだー…
最初のコメントを投稿しよう!