プロローグ

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私は何故ここにいなければならないのかがわからなかった。 かび臭い部屋。薄汚れた明かり。継ぎ接ぎの窓ガラス。 どれもが辛気臭くて、ここにいながら正気を保てる方がおかしいんじゃないかと思う。 世話をしてくれる者も、定時になればさっさと帰る。 誰かが病気になっても、基本は医者等呼ばずに薬を与えるだけで、やはり看病に残る者などいなかった。 私と同じく一緒にこの施設に住まざるを得ない者達とも、私は馴染めなかった。 私は、恐らくこの容姿と器量の良さから…別格扱いをされており、部屋はかび臭くとも個室。体に異変が起これば医師が見に来てくれた。 (もしかすると、私が何処か家柄の良い人達に引き取られた暁には、その恩恵を受けようとしているのかしら?) 自分への待遇の良さをそう考えた私は、馬鹿じゃないの、と呟いた。 私がこの施設を潰す理由はいくらでもあるが、間違っても利益になるような事は一つもしたくない。正直、ここを出たら、こんな施設とは縁を切りたいのだー…
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