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「ーーさん?」
「ーーさんっ!!聞こえていますか!?」
診察室の大きな窓。
真っ白な光を見つめ柔らかい風を感じていたのだけれど、大きな声に、私は意識を取り戻した。
「すいません…また、何かが流れていきました」
「そうですか…。ーーさん、非常に言いにくいのですが…」
「残された時間は少ないです。…名前を無くされてしまった方はどなたも1ヶ月以内に消えてしまうらしいですから」
らしい。
カウンセリングに来た病院のお医者様はそう言った。
それもそうだ。
この病気にかかれば、全て忘れて、忘れ去られてしまうから。
過去の患者さんも、記憶と記録から消えてしまうのだから。
唯一、患者と関わりのない第三者を使うことで病気の存在と症状だけは後世に伝える事ができる。
未来に繋ぐ事が、この病気を治す希望になると信じて…
…でも
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