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部屋に戻ってからも、綾の涙は止まらない。
真次も敢えて綾の体を自分から放すことはなく、ずっと抱き締めたままだった。
暫くして、ようやく綾の鳴咽がおさまりかけて、いくぶん落ち着いたころ……
「もう……、いい」
綾は、自分がずっとしがみついていた真次の胸から顔を離そうとした。
真次のシャツが自分の涙でびっしょりと濡れている。
綾の頬を伝う涙もまだ乾いてはいない。人よりも色素の薄い茶色い瞳が涙でうるんでいた。
「いいよ、このままで……綾が落ち着くまでこうしてるさ」
「いいから、放せ…」
そう言いかけた綾の頬に、真次の唇がそっと触れる。
綾の頬を濡らす涙を真次の唇が優しく拭う。
綾はびくりと震えた。
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