2/7
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
部屋に戻ってからも、綾の涙は止まらない。 真次も敢えて綾の体を自分から放すことはなく、ずっと抱き締めたままだった。 暫くして、ようやく綾の鳴咽がおさまりかけて、いくぶん落ち着いたころ…… 「もう……、いい」 綾は、自分がずっとしがみついていた真次の胸から顔を離そうとした。 真次のシャツが自分の涙でびっしょりと濡れている。 綾の頬を伝う涙もまだ乾いてはいない。人よりも色素の薄い茶色い瞳が涙でうるんでいた。 「いいよ、このままで……綾が落ち着くまでこうしてるさ」 「いいから、放せ…」 そう言いかけた綾の頬に、真次の唇がそっと触れる。 綾の頬を濡らす涙を真次の唇が優しく拭う。 綾はびくりと震えた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!