第三章

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   「…………不味い。」  初老の男性は、一口飲んだ紅茶のカップをテーブルに置いた。  「まず。温度が駄目です。その上、水も水道水ですか。沸騰させてませんね。加えてジャンピングも蒸らしもなっていない。第一、ミルクも温めていない、ポットで運んで来ない。……嘆かわしい。」  ふーと、溜息を吐いて額に指を当てる。運んできたウェイターは、オロオロしていた。  「ああ、ごめんねぇー。偏屈なジジイでさ。気にしないでよ。」  向かえに座った男に言われて、ウェイターはすごすごと引き上げる。  「ランちゃん。普通の喫茶店ではこんなモンだよ?ランちゃんと同じ位美味しい紅茶を飲みたかったら、専門店にでも行かないと。ま、今時喫茶店とも言わないか。」  「プロフェッサー泉。金銭を要求する以上は、それなりの対価が必要だと言っているんです。…………何ですかその山盛り生クリーム。」  「…やっと名前呼んだな?出来れば親しみ込めて、灯(あかり)って呼んで?これ?キャラメルバナナパフェ~ガトーショコラ添え~の、大盛り。学者は頭使うのよ。」  灯は美味そうにバナナに生クリームを絡めて頬張る。  この二人。執事と名乗る方は、ソレイユ王室の執事で、今は革命軍のNo.2。名前はランと呼ばれており、大抵はソレイユ王国の執事で通っていた為、それが本名かは、亡き国王夫妻とその跡取りしか知らない。一方、プロフェッサーと呼ばれた男は、千樹学園大学部、元民俗学教授にして、現名誉教授。………薬嗣の師匠であり、薬嗣を後釜に据えた張本人。薬嗣の特異体質が全く効かない稀有な存在で、奇人変人の多い学校の中で、類にも漏れず、名を馳せた人物だった。
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