第1章

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 「お風呂場がカラオケルームにハヤガワリ!」  勤め先の壁掛け時計の電池が切れたのでホームセンターに電池を買いにきたら、そのPOPを見かけ衝動買いしてしまった。  自分には珍しいことだ。出先とはいえ仕事中に私用の買い物。珍しいというか初めての経験だった。とはいえそれほどの背徳感もなく罪悪感もなかったのは衝動買いだったからかもしれない。  これだけ科学が発展しても「防水」はなかなか難しいらしく箱の裏面には「お湯に沈めないでください」と「容器を完全に閉めるのを確認してください」と書かれていた。それを見るとPOPは誇大広告な気もしたが商品を戻そうとは思わなかった。  一応、出先での私用の買い物は大目に見られていて「私用で買ったもの」の項目をマジックで塗りつぶせば領収書を経費として提出しても問題はない。問題はないのだが、さすがに防水ミュージックプーヤーはどうだろうと思い、プレーヤーを買ってから電池を買うのにレジに並びなおした。  最近は残業も少なくなった。月に20時間あるかないかだ。給料の手取りはかなり減った…が、携帯電話もプライベートでは持っておらずインターネットの回線も引いてない、その上これといった趣味もなければファッションや化粧にかけるお金も同年代の人に比べれば驚くほど少ないおかげかそれほど痛手にはなっていない。  本が読みたいときは図書館に行くし映画館にはレディースデイにしか行かない。外でコーヒーを飲むこともほとんど無いし休日に一緒に外食するような友人もいない。よくよく振り返ればなんともサバサバした、というか侘しい人間関係だがそのことを苦に思ったことはない。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!